【Vol.08】 株式会社サクラクレパス 様 | 生産性向上を図るための具体的な事例とともに、PATLITEの簡易IoTソリューション、ワイヤレスデータ収集システム、AirGRID®の利便性と効果を実感してください。
サクラクレパスは、社名の通り「クレパス」を開発した総合文具メーカーです。1921年(大正10年)に「日本クレィヨン商會」として創業してから、2021年で100周年となりました。「教育・文化に貢献すること」を社是に掲げ、教育現場にふさわしい文具の製造と販売を続けています。クレヨンとパステルの長所を兼ね備えた「クレパス」のほか、水加減の調整によって透明水彩と不透明水彩を自在に表現できる「マット水彩」、クレヨンの発色と色鉛筆の描きやすさを活かした「クーピーペンシル」、名前書きに特化した「マイネーム」など、寿命の長い製品を扱っているのが特徴です。皆さんも使ったことのある文具が一つはあるのではないでしょうか。
近年は商材を販売するだけでなく、イベントやアートミュージアムでの絵画展示を通して「絵を描く文化の育成」に努めています。今後はWebサイトを利用するなどして、教職員の方々のお役に立てる情報の発信にも力を入れていく予定です。また、文具だけでなくオフィスや工業向け用品も扱っています。
IoTを検討しはじめたのは、生産設備の稼働や停止についてのデータが思うように取れなかったからです。 IoT化の前は現場の作業員が紙に手書きした日報でデータを取っていました。1日の作業が終わると、まずは担当者が日報を見ながらエクセルにデータを打ち込みます。これを1週間分から1か月分集めて、大きなデータとして見えるようにしていたのです。
この方法には大きな問題がありました。日報は作業のあいまに記入されるものです。リアルタイムでは記録されず、どうしても5分~10分刻みになってしまいます。設備の大きな不具合については比較的正しく記録できていたものの、細かな不具合については「いつ」「どんな理由で」停止したのかがわからない状態でした。このような方法でどうにかデータを抽出できたとしてもうまく可視化につなげられず、「正確かどうかわからないデータを取っただけ」の状態が続いていました。
「IoT」と言えるかどうかはわかりませんが、実は20年以上前に別のツールでデータの抽出と活用を試みたことがありました。ただ、そのツールは洗練されておらず、不具合が起きたときもメンテナンスをおこなっていたときも、すべて「停止」としてカウントされてしまうものでした。
設備がいつ止まったのか時系列に分析できないツールだったのも問題だったと思います。1日の作業が終了したあとに日報と照らし合わせて、設備がいつ止まったのかを突き止めなければならなかったのです。それに加えて、スキルのある者が集計しないと使えるデータにならないことも問題でした。そのスキルを後輩に教えるにしても、手間と労力がかかっていました。
こうした事情もあって、誰でも簡単に生産設備の稼働状況を可視化できるIoTツールが必要であると感じていました。
弊社ではもともとパトライトの表示灯を一部の設備で使っていました。そのため「パトライトと言えば表示灯」のイメージがあるだけで、AirGRIDのようなツールを開発していることは知りませんでした。
そのイメージは、IoTツールの展示会で変わりました。
パトライト社がAirGRIDを展示しているのを見つけて、「少し話を聞いてみようか」といった軽い気持ちでブースをのぞいたのが検討のきっかけです。その後、14~15社のシステムと一緒に検討を進めました。
弊社には導入するIoTツールに求める3つの条件がありました。
パトライト社は自社工場の見学会を開催しているのですが、自らAirGRIDを使って効率化しているのを見たときに3つの条件を満たしていることがわかりました。これがAirGRID導入の決め手です。
AirGRIDならスモールスタートできるのもいいですね。
AirGRIDと比較検討していた他社のシステムはオーバースペックだと感じることがありました。初期費用も数百万円、数千万円になってきます。一方のAirGRIDなら数十万でスタート可能です。小さくはじめて少しずつ拡大したいと考えていた弊社にとっては、期待するコストパフォーマンスの面も含めてちょうどいいシステムだと感じました。
弊社では、現在のところ全てではありませんが主な設備にAirGRIDを導入しており、大きな効果が出ていると感じています。
弊社の製品に「マット水彩」という絵具がありますが、そのポリチューブに文字や絵柄を印刷する設備の稼働率を調べました。すると、まだAirGRIDを導入していなかった2020年1~2月には平均稼働率90%程度を維持していましたが、あるときから低下し3月には80%台前半にまで落ち込んでいました。AirGRIDのデモ機を導入したのはこの時期です。そして4~5月に稼働データをもとに改善した結果、5月の平均稼働率は94.8%、日別の最高稼働率としては99.7%を達成しました。2019年度の平均稼働率は81.3%でしたから、16%以上の改善です。
それ以降も日々データをチェックして改善を図った結果、2020年5月限の稼働率は一度も90%を割りませんでした。その後も稼働率は堅調に推移しており、2021年度の平均稼働率は92.28%となっています(2021年6月末現在)。AirGRID導入前も90%以上の稼働率になることはありましたが、それを維持するのは非常に難しく稼働データを日々活用することで、高稼働率を維持できたのだと考えています。
AirGRIDの導入前は、日報に記入されたデータをエクセルにまとめて、週単位か月単位で確認していました。これでは設備になにかの問題が起きていたとしても、スピーディーに対応できません。現在は1日の作業の終わりにデータを確認して、どんな異常が起きていたかを把握。次の稼働日までに修理や改善ができています。
工場内の設備が停止した理由がわからないことはよくあります。そんなときIoT化が進んでいない工場では、保全班が該当の設備に一日中ぴったりついて監視することで「なぜ」「どのような状況で」停止したのかを探らなければなりません。この方法では、いつ起こるかわからない不具合のためだけに人員を割かなければならないので非効率です。
AirGRIDはネットワークカメラ監視システムと連携して設備を監視することができます。設備がトラブルを起こしたときはガントチャートをクリックするだけで異常停止前後の映像を呼び出せるので、原因究明のための手間も時間も削減できます。必然的に修理や調整の時間も短縮できるので、大きな効果があります。
RS-232Cのバーコードリーダーが接続できるAirGRIDを導入し、生産品目をバーコードで読み取ることで品目毎の稼働分析に活用しています。また、別の設備ではPLCのプログラムを変更しエラーコードを8接点で出力し、その信号をAirGRIDで送信することで70~80種類あるエラーコードも、無線で自動取得できようにしています。
自分ではしっかりと設定しているつもりなのに製品の生産数がカウントされなかったり、検出した異常を示すデータがうまく受信機に飛ばなかったりということはありました。
また、弊社のある工場では4台の機械をつなげて1本の生産ラインを作っている箇所があります。前半2台の機械に対して1つの表示灯を設置、後半2台の機械に対して1つの表示灯を設置しています。ただ、データとしては前半と後半の独立した稼働率だけではなく、1本のライン全体の稼働率も必要になります。そこで前半と後半を連動させてデータを生成しようと考えたのですが、なかなかうまくいかず苦労しました。
このように設定がうまくいかない場合は、もう一度AirGRIDの説明書を読み込んで修正します。それでもわからなければパトライト社の営業さんに連絡することにしていました。 こちらからの質問への対応は早かったです。ほとんどの場合、当日中には電話かメールで回答をいただきました。サポートが充実しているので設置や設定についての疑問点は早く解消されると思います。
現場からの反発は特にありませんでした。むしろ好奇心を持ってくれる作業者のほうが多かったように思います。ただ、もともと日報などを利用して手作業でデータを取っていたので、IoTツールに触れたことのある作業者はほとんどいませんでした。そのため、まずは「稼働率とはなにか?」から現場に浸透させるのに苦労しました。それと同時に「AirGRIDとはどういうものか。活用することで具体的にどんないいことがあるのか」を説明することで、全体の意識を統一していきました。
AirGRIDを効果的に活用するには、正しく使うことが大切です。たとえば、作業の段取り替えのときは「段取り替え」のボタンを押す。メンテナンスのときは「メンテナンス」のボタンを押す。これによって正確なデータが取られていきます。ただ、浸透するには時間がかかりました。こうしたルールを周知徹底するために、弊社では独自の運用マニュアルを作成しました。それとともに、現場からの疑問の声はなるべく早く拾って解消するようにしています。
また、稼働をリアルタイムで表示するモニターを設置しました。それに目標とする稼働率を掲示することで、「稼働率についてはよくわからないけれど数字が低いのが嫌だ」「目標の稼働率に近づけたい」と努力してくれる作業者が出てきました。かつては管理者層にしかわからなかった稼働率を全員が見えるようにしたことで、目指すべきところに向かって進めるようになってきたと思っています。タブレットでどこでも設備稼働状態が確認できます。
すでに導入している大阪工場でAirGRIDを拡充し、鹿児島工場にも横展開を始めています。その後は海外の工場に展開していく予定です。これらの工場では、まだ紙ベースでデータを取っています。AirGRIDを活用してデータを集めればペーパーレス化を推進できるだけでなく、本社や大阪工場など現地と離れた場所で管理できるようになり業務が効率化されると考えています。