【Vol.01】 島津プレシジョンテクノロジー株式会社 様 | 生産性向上を図るための具体的な事例とともに、PATLITEの簡易IoTソリューション、ワイヤレスデータ収集システム、AirGRID®の利便性と効果を実感してください。
当社は島津グループの一員として、株式会社島津製作所 フルイディクス事業部で取り扱っている、油圧ポンプ・油圧モータ・油圧バルブなどの油圧機器と、同社産業機械事業部が取り扱っているターボ分子ポンプの製造を担っています。一部の設計から製造・検査まで独自のラインを構築・運用しており、妥協を許さない技術の追求と一貫した品質保証への取り組みにより、さまざまな機器のコンパクト化、軽量化、高圧化など多彩なニーズに応えています。
油圧機器を製造する機械加工職場において、加工設備の稼働データを取得するために利用しています。82台の加工設備に搭載しているパトライト表示灯すべてにAirGRIDを設置して、無線(IEEE802.15.4 ZigBee準拠)で設備稼働情報を取得しています。工場全体を無線受信機6台でカバーできています。パトライト表示灯およびAirGRIDを設置している、加工設備の種類の内訳は次の通りです。NC工作機械: 82台(内訳: マシニングセンター、旋盤、歯切盤、研削盤など)なお、AirGRIDから取得した各信号灯の設備稼働情報は、パトチャート(GLOVIA smart MESPATCHART、現在「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart MES」に統合)で見える化しています。
「稼働率や可動率(べきどうりつ)を集計」することで、「設備の信頼性評価」、「生産能力向上のための分析」、「変化点管理」などの用途に利用しています。
設備グループごとに総稼働時間を集計し、日次、月次で稼働率と可動率を集計しています。集計された情報は、生産会議や職班長会議などにおいて報告・共有しています。なお、可動率は90%以上を維持することを目標としてほぼ実現できています。
設備稼働時間と故障回数などの傾向分析から、信頼性の尺度となる固有アベイラビリティと稼働時間を算出して、設備更新計画の指標として活用しています。
設備稼働状況を可視化(ガントチャートなど)して改善点を抽出し、加工設備・ラインのムダ取りに取り組んでいます。各工程における加工条件やロボットでのマテハン動作などを見直し、加工時間や平均動作時間の削減を実現しています。具体的な例は次の通りです。
稼働状況を可視化したデータは、工場内の不具合調査にも活用しています。たとえば、日報などで工場内不具合の発生情報から、パトライト表示灯の点灯状態を確認・分析することで、不具合の発生時間を特定し、以降の加工品を不具合対象品とするといった対応を取っています。
日々、生産能力や設備稼働率の向上に取り組む中、2011年頃から設備のチョコ停や故障による停止時間といったムダを排除するための議論が交わされる機会が増えていきました。しかし、当時は停止時間はもとより、正確かつリアルタイムに稼働時間や稼働率を把握するための環境が整っておらず、当たり前の話ですが、正確な稼働状況を把握していないまま改善策を実施しても、大きな成果を上げることはできませんでした。そのため、加工設備ごとの正確な稼働時間および停止時間を収集して、可視化・分析するためのツールの導入を検討することにしました。
私たちが検討を開始した時は、AirGRIDのことを知りませんでした。そのため、PLC(Programmable Logic Controller)を用いたシステムなど、他のツールや手法の導入を検討しました。また、具体的な検討にはいたりませんでしたが、パトライト表示灯の表示を光センサーで感知してデータを取得するといったアイデアも出ており、 そのような時に、ちょうどAirGRIDの案内がパトライト社から来たので、すぐに導入の検討を開始しました。
加工設備は製造年代の異なる複数メーカーの加工機械で構成されています。そのような環境でPLCを導入しようとすれば、コストも、手間も、時間もかかります。検討段階では、どのくらいの成果を上げられるか未知数な部分もありましたので、稼働時間を把握するためだけに導入を進めることは難しい状況でした。また、新たなツールや仕組みを導入するに当たり、加工設備や機械への影響はできるだけ抑えたいという意向もありました。そのため、次のポイントからAirGRIDの採用を決めました。
利用例でも話をしましたように、すでにさまざまな成果が上がっていますが、まだ稼働データを可視化・分析してできるカイゼンをやり尽くしたとは考えていません。たとえば、単なる稼働や停止だけでなく、正味切削時間なのか、非切削時間なのか。さらには、段取時、素材待ち、生産指示待ちなどの設備、停止の原因なども把握・分析できるようになれば、さらなるムダ取りや生産能力向上が可能だと考えています。また、過去の結果を分析して対策を練るだけでなく、リアルタイムの稼働状況を大型モニタのアンドンで現場で見える化することで、トラブル発生時の待機時間を削減させるため、すぐにアクションを起こせる環境作りにも取り組みたいと考えています。導入効果という点に関してさらに重要なポイントは、このようなカイゼンや生産能力向上への取り組みを継続的に取り組める環境を実現できたことです。これは加工ラインに限ったことではなく、組立ラインや性能試験ラインでの応用も可能だと考えており、AirGRIDの導入効果はさらに広げられると期待しています。
AirGRIDの設置作業はシンプルなのですが、当社の場合は設置する台数が多く、表示灯が高所に設置されている場合もあり、作業に手間取ることもありました。また、設置作業時には加工ラインや加工機械の一部を停止しなければならず、作業スケジュールの調整や無線環境の調整などにも手間取り、当初予想していたよりも準備期間がかかってしまいました。短期間で導入するには、当社が導入した当時は整備されていませんでしたが(笑)、パトライト社の導入支援サービスを積極的に活用した方が良いかもしれません。
使い込んでいくと大量のデータを処理する機会も増えてきます。より速く、簡単に、データの処理ができるようになれば、さらに適用できる範囲も広がり、導入の価値も高められると思いますので、ハードウェアとソフトウェアでのさらなる進化にも期待しています。AirGRIDはコストパフォーマンスが高く、適応範囲も広いのですが、データは集めるだけでは意味がないので、さまざまな場面での活用提案や導入事例に関するより積極的な情報提供をお願いします。AirGRIDのさらなる普及にも取り組んでもらい、さまざまな業種や製造工程での利用が進むことにも期待し、他社のAirGRIDの活用方法について情報交換をしたいと考えています。当社での工場見学も可能ですので、パトライト社からの依頼があれば情報交換の実現のためできるだけ協力したいと思っています。